茶箱は一から十まで手作りだ。お茶の葉を新鮮に保つための防湿・防虫・防臭の機能は、百年も前から変わらないといわれている。これまでの形を大きく変えることなく、静岡の杉材を使い、日本の職人さんの手で作られてきた。それなのに、文献すらほとんど存在しない。私が持っている茶箱の知識は、その多くが職人さんの口伝によるものだ。なぜかといえば茶箱はあくまでも「脇役」だからだ。
しかし、主役であるお茶の葉の聞きたて約でありながら、聞けば聞くほど、茶箱の活躍ぶりは健気なのだ。お茶を新鮮に保つという基本をしっかり守ったうえで、種々の功績を持っている。
例えば茶箱は「浮世絵」を世界に広めるきっかけを作ったともいわれている。日本の茶ばを世界中に届ける中、茶箱に張られた多色刷り木版画ラベルの秀逸さが海外で話題を呼んだ。そのあたりは、「茶箱広重」(一ノ関圭/小学館ビッグコミックス)という漫画が1983年に出てもいる。
さらに文明開化の頃、日本が積極的に日本のお宝を海外万博などに出品していたおりに、船便事情の悪い当時でありながら、いかなるデリケートな素材であっても傷ませることなく現地へ送り届けて、その機能性の高さに世人を驚かせていたという逸話も伝わっているという。
そんな健気な茶箱だからつい肩入れしたくなる。裏方にひっそり佇む茶箱たちを表舞台に引き出して、「そろそろ主役になってもいいですよ」と言ってみたい。それが「インテリア茶箱」の始まりだった。
今立派な布を張ってもらった茶箱たちが色々なところで優れた収納性能をそのままに、存在感を発揮している。椅子になったり、飾りになったり、大切な思い出を守るものになっていたり。基本たった一つのカタチなのに、人の想いや想像力をもって「茶箱」を媒体とした世界がどこまでも広がっていく。これが醍醐味だ。
(有)インテリア茶箱クラブ パイザー真澄 寄稿文